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ドラム・バッファー・ロープ DBR: Drum Buffer Rope

どらむばっふぁーろーぷ でぃーびーあーる

ドラム・バッファー・ロープ(略称DBR)とは、仕事の流れの中でボトルネックとなる工程に注目し、スループットを最大化する生産スケジュール手法。世界的なベストセラーとなった『ザ・ゴール』の著者であり、物理学者でもあるエリヤフ・ゴールドラット博士が開発した。SCM(サプライチェーン・マネジメント)の理論的基礎となった制約理論(TOC)において、スループットを最大化するために用いる。

 

納期遅れが頻発している現場では、約束した納期を守るために、なるべく早く資材投入を行ってしまいがちになるが、これが逆効果となり、工程間中の仕掛品を増大させ、優先順位が煩雑になり、工程を混乱させ、かえってリードタイムが長くなることを招いている場合が多い。なぜならば、「つながり」と「ばらつき」のある仕事の流れでは、必然的にどこかにボトルネックがあるが、そのボトルネックが必要としている資材をいかに早く投入しても、ボトルネックの前工程のいずれかで仕掛品が詰まってしまい、滞留を引き起こすことにつながるからである。

 

こういったことを防ぐために、DBRではボトルネックを使って工場中の資材の投入タイミングを決める。具体的には、以下の3つの要素から成り立つ。

  • ボトルネックのペースに合わせて資材投入の合図を出す「ドラム」

  • 全体のスループットを決めるボトルネックを止めないように保護する「バッファー」

  • 早すぎる投入を防ぐ「ロープ」

 

『ザ・ゴール』では、ピクニックの事例からボトルネックに集中したマネジメントを実践することで、全体のスループットが大幅に上がることが示されているが、DBRを実践することは、以下の3つのパラダイムシフトを実践することになる。

  • 個別の効率を上げると全体の生産性が上がる→全体の仕事の流れがよくならないと全体の生産性は上がらない

  • 早く投入すれば早く物はできる→なるべく遅く投入した方が滞留は減り、早くものができる

  • まとめて作った方が効率は上がる→まとめて作ると仕掛品の滞留が増えるだけ。一個流しの方が、仕事の流れは良くなる。

 

「トヨタ生産方式」(TPS: Toyota Production Systems)との類似性が良く指摘されるが、『トヨタ生産方式』の著者、大野耐一氏は、ゴールドラット博士に直接会った時に、TPSを工場だけでなく、より幅広く誰でも適用できるように理論化することを促し、ゴールドラット博士も、”No TPS, No TOC”と大野耐一氏をマイヒーローとして尊敬してやまなかった歴史的事実がある。

 

TOCによる改善活動が描かれている『ザ・ゴール』の舞台が工場だったため、生産現場の改善手法と捉えられがちだが、DBRは「つながり」と「ばらつき」のある組織の仕事の流れの全体最適のマネジメント改善のために活用され、病院やクリニック、行政組織の生産性向上に適用され目覚ましい成果を出している。

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